第2章 少女の名は
「あー、そうか。んじゃ、適当に投げとけ」
「やっぱテキトーで良いの?」
「ああ、適当にだ」
そんな会話が2人の間で紡がれた後、女子生徒は円の中に立った。
そして、
そーれ!
という、何とも気の抜ける掛け声と共にボールを放つ。
「…350m」
「んー、そんなもんか」
──!?
今、この女子は個性を発動しているようには見えなかった。
しかし、それにしては凄い記録である。
──え、これ…個性、なのかな………?
今までの彼女の成績は見ていなかったために知らないが、少なくともこの競技での成績は、女子の出せるものではない。
それくらいは分かる。
だから、彼女の「350m」というのは、個性ありきのものであるはずだ。
しかし、個性を使用する際には、大抵の場合で見た目に変化が現れるというのに、彼女には何の変化もなかったような気がする。
それに、この競技を合わせると今までに5種目も行っているのだ。
それなのに全く疲れた様子が見られず涼しい顔をしており、その表情にはどこか余裕がある。