第9章 決意
「ごめんよ皆」
「遅くなったね」
「1-Aクラス委員長飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」
普段なら煩いなあと呆れるほどの大声。
しかし、流衣の頭はそれどころではなかった。
「っ………しょう、た…?」
ポツリと呟いたのは、クラスメイトに隠している関係を露見させないためか。はたまた無意識の呟きだからか。
流衣はマイクの服の裾を掴み、小さく震えていた。
相澤の体はボロボロで、意識を失っている。
頭部の出血も酷い。
風水広場に広がる鮮血。
相澤は蛙吹が担いでいるが、あれが彼のものだと、流衣は即座に理解してしまった。
この場に元々いた教師は13号と相澤の2人のみ。
それなら、と13号に生徒を守るよう指示して、敵の集団の中に飛び込むのが相澤だ。
そういう性格なのだ。
しかし何があったか、13号ですらも倒れていた。
──なんで?
──どうして消太が?
──死ぬ?
──…また、私の目の前で人が死ぬの?
──消太が?
──今度の犠牲は、消太なの?
──私、何もしてないのに?
「いや、だ、…」
震えたまま口から零れた声は、自分のものではないみたいだ。
覇気のない声は、恐怖していることを周囲に伝えてしまう。
「落ち着け、流衣」
隣で親しい声が誰かを宥めている。
でも、それでも震えは止まらない。
──しょうた?しなない。死ぬはずない。消太。
──私はなにも。してないのに。死なないで。
──消太、死なないで、死なないで…
──私のせい?私が殺したの?
──人が死ぬ。
──やだ、もう見たくない。大切なのに。
──たった、1人の家族なのに。
「しなないで、」
もう思考と言葉がぐちゃぐちゃだ。
バラバラしていて、自分でも何を考え何を言っているのか理解できない。