第8章 昔の話
──ヒーローなんてと言っていたのも、丁度その頃だった。
今は流石に言わないけれども。
あの頃は、今からは想像もつかないほどに荒れていた。
本当に、自分の世界には相澤しかいない、そんな考えをしていたから。
中学に入ったあたりから、それも落ち着きを見せ、閉鎖的な性格も、一旦は収まった。
しかしそれは仮初のものでしかなくて、他人と距離を置く事が異常に上手くなってしまった。
人と必要以上に近付きすぎない、これが──彼女なりの、保身術となったのだ。
変に近寄ったせいで、あとから拒否される事を避けるための。
その変化を見ていた大人たちは心配したが──彼女が、本音をおもむろに見せる事はなくなったのだった。