第8章 昔の話
ヒーローはお節介、とはよく言ったものだ。
正にその通り。
相澤と基本馬が合わないこともあってか、流衣とは普段話すことすら多くないのに、オールマイトは彼女の入学を知らされてから、ずっと心配し続けていた。
──『どーもー、元気に平和の象徴やってますー?』
けらけらと明るい声と共に電話をかけてきたのは、懐かしい声──流衣だった。
深い交流はなく、連絡先を交換していた事自体を忘れていた程だったのだが──そんな驚きを隠すことなく、オールマイトは声をあげた。
「時暮君!?
ひ、久しぶりだね…私に何か用かい?」
すると、間髪入れずに返答があった。
『お祝いですよ、お祝い。雄英に就任したんでしょ?』
「なんで知ってる…って、聞くだけ野暮だったね。相澤くんのところに居るんだもんね、君…」
何をするにも怠そうな顔を崩さない同業者の姿を思い出し、オールマイトは苦笑した。
『それもあるけどね。挨拶も兼ねておこうと思っての電話ですよ』
「挨拶…?君が私に?」
まさかと思った。
ヒーローなんかなりたくないはず、恨みもなければ憧れもない。
彼女はヒーロー業に関しては何も思っていないはずなのだ(相澤…イレイザーヘッドを除いては)。
それなのに、彼女は明るい口調で続けた。
『そ、私…今年、雄英受けるんですよ。合格は確定です』
あまりの唐突さ、そして自信満々なその言葉にオールマイトは苦笑するしかない。
──まあ、確かに君が落ちるなんて事はないだろうけど….
『よろしくね、オールマイト先生』
語尾にハートが付きそうな口調に、…胸が痛んだ。
暗かった幼少期を思い出したからだった。
──友達、できればいいけど。