第8章 昔の話
オールマイトはそんな事しない、憎悪したりなんかしない。恐怖することもない。
そう言う人もいるだろう。
しかし、流衣にとってはどんな人間も等しく信じられない。
信じられるのはただ1人、──相澤だけ。
自分を暗い孤独から、救い出してくれた男。
外の世界を見せてくれ、自由をくれた家族。
彼の隣が唯一の居場所で、心安らぐ場所でもある。
──確かに、友達は欲しいけれど。
「…私には、消太がいれば充分ですから」
小さな嘘に微笑みを添えると、やはりオールマイトは悲痛な顔をした。
──ちょっとは、ポーカーフェイスぐらいしてよね。
返事を待たずに、流衣は仮眠室から出ていった。