第8章 昔の話
「何それ、そんな心配なんかしなくても…秘密を聞き出そうとなんかしませんよ」
だから、敢えてこちらははぐらかす。
純粋な心配の言葉なんて、掛けられたのはいつぶりだろうか。
相澤とマイクでさえ、態度には出しても言葉にしないというのに。
「そんな事は心配していないさ。立場的な問題で、ヘイトを集め易いだろうと思うと」
私が、気にするんだ。
オールマイトは、そう言った。
はは、と乾いた笑みが漏れる。
「とんだお人好しですね。私が周囲から好意を集められないのは、いつもの事じゃないですか」
しかし、そんな言葉すらも、オールマイトには痛い。
「時暮くん、」
──やめて。
心配されるのは、いくつになっても慣れない。
だって心配というのは所詮同情であって、それに──いつ、憎悪や恐怖に変わるかなんて、誰にも解らないのだから。