第6章 噂の少女
マスコミを帰らせた後、なぜか流衣は膨れていたのだが、相澤がその理由を知るはずもない。
マイクはというと、何となく察していたのだが、敢えて口に出すような真似はしなかった。
それどころか、互いの想いがすれ違っている事をネタに揶揄おうと、相澤をその日、飲みに誘っていた。
しかし、それも頓挫する。
「…でさぁ、俺は思う訳よ。
なんで流衣はあんなにキュートなのかって」
顔を真っ赤にして、同じ言葉を繰り返すマイク。
相澤はうんざりしていた。
酔ったマイクほど、面倒な奴はいない。
マイクの言う「キュート」が、妹を可愛がるような感覚に等しいのは知っている。
だって、流衣の顔は可愛いというより美人寄り──いや、そういう事ではなく。
しかし、それでも流衣を可愛いと評する男を、何の感情も抱かずに見ることはできなかった。