第6章 噂の少女
「…あいつは、やらん。
頼まれても俺の家からは出さない」
自分も少し酔っているのだろうか。
するりと本音が漏れた。
「消太に許可もらう前に、そもそも流衣がお前から離れたがらないだろ」
──俺から…?
「どういう、」
驚き焦って、声が掠れる。
相澤家から出たがらない、ではないのか。
言い方が妙に引っかかった。
しかし、返答は返ってこない。
代わりに、
スースー
といった、何とも安らかな寝息が聞こえてきた。
相澤は少し考えてから、タクシーを呼び出し、そのまま酔っ払いを置いて家に帰った。