第6章 噂の少女
外でそんな会話が繰り広げられているとは知らずに、流衣はつまらなさそうに1人で弁当を食べていた。
相澤消太お手製の弁当である。
彼自身はまともな食事を殆ど摂らないが、成長期はちゃんと食べろ、と流衣用に毎日弁当を作ってくれている。
──相変わらず、食べないくせに料理は美味しいけど…
1人で食べるのは、寂しい。
家では相澤と2人での食事。
1人での外出は禁じられているために外食になっても必ず隣に誰かしらはいてくれた。
だから、1人での食事はこれが初めてであり──それが、ものすごく寂しい事のように思えた。
「ワガママなのかなあ…私」
相澤に言ったら、味は同じだろうと一蹴されてしまうのだろうか。
マイクは、何となく笑ってくれる気がする。
じゃあ寂しくなったら俺か消太を呼べよ、とか言ってくれるのだろう。
自分を守るために雄英に入ったというのに、皮肉なことにここの生徒であるという事実が、流衣と相澤たちとの距離を邪魔していた。