第6章 噂の少女
しかし流衣には、どちらも存在しなかった。なぜなのだろうか。
自分も質問された事だが、それとは勝手が違う。
自分は確かに、個性を使いこなせず、怪我が多いが──しかし、それでもヒーローになりたい理由はある。目標もある。
だというのに、彼女は目標も理由もなく、それでいてヒーロー科に来た。なぜだろう。
──親がヒーローになれってうるさい、とかかな…?
無理に理由をつけてみるも、どうも納得がいかない。
──何が何でも、自分の意志を押し通す人に見えたけど…
やっぱり分からないなあ、と思ったところで、
ウーウー
警報が鳴った。