第5章 意識の違い
「やる気の無さってさー、やっぱ目に見えるもの?」
相澤が自宅に帰ると、おかえりより先にこんな言葉を投げかけられた。
「…どうした?」
リビングに行くと、ソファに寝転ぶ流衣の姿があった。
学校でも家でも、無気力を貫く姿勢は変わらない。
「いや別に。緑谷に、本気出してないでしょって言われちゃったから」
「…へぇ」
個性把握テストや戦闘訓練だけでなく、他の実技授業でも流衣は見学や手抜きを続けていて、確かに注視していれば気付くのかもしれない。
元々緑谷はよく考える性格だから、違和感を覚えていてもおかしくないと言える。
相澤がソファに近寄ると、流衣は無言で座り直した。
そして、ちょこんと隣のスペースを少しだけ空ける。隣に座れという事だろう。
相澤がそこに座ると、体重を預けてきた。
──どうも、この距離感だと勘違いしそうになる。
学校では、流衣はこんなふうに無防備にはならない。いや、寝ることには寝るが、他人との距離は充分すぎるくらいとっている。
しかし家に帰ると、パーソナルスペースに躊躇なく相澤を入れてくる。
それが嬉しいようで、悲しいような。
なんとも言えない気分にさせる。