第5章 意識の違い
だから、緑谷みたいな立派な理由はないんだよ。
そう言って流衣は笑った。
「君みたいに本気でなりたい訳じゃなくて金のためだし、だから、本気出す必要もないかなって」
──なんでそんなにお金に拘るんだ…?金に困ってるようには見えないぞ……?
緑谷は逆に違和感を覚える事となったが、そうなんだ、と笑って深く掘り下げるのをやめた。
何となく、本音は語ってくれない気がしたからだ。
いや、これも本音なのかもしれないが、大切な何か──他の理由までは語ってくれないと、直感的に思ったからだった。
「帰り際引き止めてごめんね。…じゃ、また明日。怪我、お大事にね」
ひらひら、と手を振って流衣は帰っていった。