第5章 意識の違い
ハラハラと流衣を見つめていると、彼女の口が小さく動いた。
──『だ い じ ょ う ぶ』
そう、動いたように見える。
──大丈夫って、何が!?安心できない!!
吹き出す汗の量が増えた気がする。
怖いのではない。
不安なのだ。
「遅くならないように帰りなよ。親御さんも、心配だろうし」
遠回しに、あまり余計な話はしないでほしいと伝えたつもりだ。
オールマイトには、これが精一杯である。
それが伝わったのか、そうでないのか。
流衣はにっこり笑って、楽しそうに頷いた。
「ありがとうございます、先生。
では、少しだけ寄り道して帰りますね」
じゃ、緑谷、行こ!
そう言って、ズンズン流衣は校門の方に歩いていった。
緑谷は慌てて、「まだ荷物教室なのに!」と校舎の方に戻っていく。
他の生徒だったら、青春だなぁと微笑ましく思えるのに、そうと思えないのは彼女のせいか内容に対する不安か。
そして、彼女の"事情"に思いを馳せ、悲しくなった。
──高校生らしい生活を、送れられれば良いけど。