第31章 向き合うことは時として混沌
「でも、わざとじゃないでしょ。それに、時暮さんはヒーロー目指してる仲間だからさ。……恐れる理由なんて、1つもないよ」
「…っそれに、私、緑谷に酷いことしたのに、押し倒」
「押っ…むぐぐぐぐ」
峰田の声が流衣の言葉を遮るが、それを更に切島が止める。
口を塞がれた峰田は苦しそうにもがくが、空気を読めと全員が峰田を睨みつけた。
「…確かに、びっくりしたけど。でも、その…ああいう事、したかった訳じゃないんでしょ?」
「!?………むぐっ、!?」
緑谷の言葉に再び峰田は暴れるが、切島はしっかりと押さえつけている。
誤解を招く言い方の緑谷だが、優しいクラスメイトたちは何も言わない。
「うん、あの時は……ごめん。よく、分からなくなって。自分自身、何がしたかったのか…」
「大丈夫だって言っただろう」
震える体を抱き締める流衣に、相澤は後ろから優しく声を掛けた。
それで堰を切ったように、流衣は涙をぼろぼろと零し始めた。
「よかっ…た………」