第31章 向き合うことは時として混沌
いつもの癖で、相澤は優しく流衣の頭を撫でた。
流衣も安心しきったのか、そのまま相澤に抱き着く。
「「「「「!?」」」」」
教室だという事も忘れて、抱き合う2人。
生徒たちは絶句する。
──どういう状況?
全員の心の声が1つになった。
さすがの爆豪でさえも、ぎょっとしている。
「よかったぁ、ほんとに、わたしっ…、」
「お前は自分が思ってるほど冷徹にはなれてなかったって事だろ。ちゃんと認めて貰えてる」
ぽん、ぽん、と一定のリズムで相澤は流衣の背中をさする。
「…恋人なのか?それとも隠し子か?」
そして相変わらずというかなんと言うか、轟がその空気をぶち壊した。
その言葉に、遅らせながら当の2人はバッと離れた。
漸く、ここが人前だと気づいたらしい。
「あぇぁ、あの、う、」
しどろもどろになる流衣。
確実にその様子は怪しく、切島の拘束から離れられた峰田は「生徒と教師…禁断の…」と呟き、うっとりしている。
あながち間違いではないかもしれない、と今回ばかりは彼の暴走を誰も止められない。
「…目の錯覚だ」
相澤はきっぱりと断言した。
──合理的じゃない上に、だいぶ無理がある!!
と生徒たちは思うが、有無を言わせぬ相澤の眼力には、誰も勝てなかった。