第31章 向き合うことは時として混沌
「…っ」
流衣の手が震える。
右手をドアに掛けたまま、流衣は動けずにいた。
相澤は、自分の事情を話してしまったのだと言った。
だから、怖いのだ。
1度仲良くなった人から、──拒否されると思うと。
覚悟なんてできない、したくない。
もう、チャイムは鳴った後。
つまり、もう皆席についているだろう。
「大丈夫だ、心配する事はない」
後ろで待っている相澤はそう言ってくれるのに、それにも信用ができない。
この前一方的に感情をぶちまけてから、気まずくて会話すらもまともにしていないというのに、彼はやはり優しい。
HRの時間を遅らせてまで、こんな自分を待っていてくれる。
──埒が明かない。
流衣はとうとう決心し、深呼吸してからドアを思いっきり開けた。