第30章 「時計」
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試験は、周囲の予想を裏切って一発合格。
理不尽に彼女だけに課された筆記試験にも見事合格し、彼女は「仮免」を取得したのだった。
そして、国は彼女の優秀さ、そして個性の恐ろしさを改めて恐れ、また、イレイザーヘッドの説得にも譲歩・納得し──────本格的な、「ヒーロー」としての資格を、与えることになったのである。
そして、相澤は流衣の過去を説明した上で、個性についての話題に移した。
個性は、「時間を止める」もの。
"時計"、と周囲は勝手に呼んでいる。
彼女の父親がそうだったように、彼女もまた、時間を操る個性持ちだったのである。
対象は色を失い、彼女の意識が続く限り、そこは永遠に時が止まる。
幼い頃は触れたものだけの時間を止めていたのだが、成長し訓練を重ねることによって、対象を見るだけで、それが叶うようになった。
ただ、ネックは命をも奪ってしまうこと、にある。
だからこそ彼女の両親や出産に携わった医師たちは命を落としたのであり、あのような事故に繋がったのだった。