第30章 「時計」
しかし、やはり社会は厳しく。
「…イレイザーヘッド、君、本気?」
流衣を連れて行った時に、試験監督にそう言われた。
彼以外にも、受験者たちからも好奇の目で流衣は見られていた。
流衣は不安そうに、相澤の服の裾を掴んでいる。
「冗談でこの子を外に連れ出すような真似はしませんが」
「…失敗したら、君の免許停止は免れないし、彼女もどうなるか」
「出しても大丈夫と思ったから、ここに来たんです」
譲る気のないイレイザーヘッドに、監督たちはそうか、と諦めたようだった。
否、諦めたと言うよりは、試験が不合格になれば仕方ないのだからと、そういった雰囲気。
イレイザーヘッドも、勿論それに気付いていた。
それがなぜか、貶されたように思えて。
ぎゅ、ときつく流衣の手を握った。
「…絶対、合格するぞ」