第30章 「時計」
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流衣と暮らし始めて、1年が経った。
相澤には随分と懐いた様子を見せ、そして家の外に出たがるようになった。
彼女を引き取ってからこの方、殆ど外出していないのだ。
「ねぇーねぇーしょーた。わたし、おそとにでたい」
──って言ってもな。触れるだけで殺す可能性があるから迂闊な事はできないし…
カレンダーを見遣る。
そこでふと思いついたのは、余りにも単純で、しかし難しく、それでいてこの子供ならという希望も見出される──そんな、複雑な案だった。
「…外に出たいか」
「うん。でたい。おそとであそびたい」
おともだちも、ほしい。
その言葉に、相澤の胸は痛む。
──個性のせいで…
「…なら、流衣。
個性を制御できるようになれ。
合格できたら、外に出よう」
──目指すは、来年の試験だ。
そこから相澤と流衣は、流衣の個性を制御できるようにするべく、特訓を始めた。