第30章 「時計」
「はーん。
その子にとってのヒーローは、消太になったって訳だ」
「気持ち悪い言い方をするな。
同情しただけだ」
面会を終え、何を話したか、女の子はどんな様子だったか──────相澤は、事細かに友人に説明していた。
同情したわけではないのだけれど。
救いたいと思ったのだ。
あんなに幼い子が、世間に見捨てられ、希望を知らないような目をしているなんて。
だめだと。
強個性の、何の思想も持たない子供が怖いのは分かる。だが、だからといって抑圧・迫害する必要はあるだろうか?
ヒーローとしての道を歩ませることはできないのだろうか?
もしくは、ヒーローとは無関係の、平和な場所へと──選択肢なら幾らでもあるはず。
提示し選ばせてから、彼女の将来を決めればいいだろう。
今の時点で抑圧ばかりされていたら、世界を恨んでしまう。
そうなれば、敵として君臨してしまうかもしれないのだ。それだけは、避けなくてはならない事だ。
そして、どのような個性なのかは分からないが──本当に、個性で人を殺めたのだとしたら、保護者、否、後見人としてなら自分以上の適任はいない。
そう思っての言葉だった。
ただそれだけ。
そう、それだけだったのだ。