第29章 教師と生徒
マイクから、A組生徒が騒いでいること、そしてその内容が流衣絡みだったと報告を受けて、──来て良かったと思うの半分、後悔半分。
緑谷の部屋に行ったと聞いて、途方もない嫉妬に襲われた。
後からやってくるのは、──後悔。
慌てて緑谷の部屋に行き、扉を開ける。
そして、目に飛び込んできたのは、緑谷に馬乗りになっている流衣の姿。
自らのシャツの釦に手を掛け、脱ごうとしている丁度その時だった。
「未成年淫行罪で捕まるぞ」
止めなければ、と思うのに、動くのは口だけ。
なぜか、体が動かない。
心が引き裂かれそうで、動いたら最後、この身は保たない気がした。
「私も未成年だから、違法ではあるけど罰則の対象にはなりませんよ先生。
…………邪魔しないでください。不愉快です」
目を合わせようとしない流衣に、苛立つ。
普段よりずっと冷たい声にも、自分でなくて緑谷ばかりを見ていることにも。
「俺も生徒たちの間の色恋沙汰に口出すなんてしたい筈ないだろ。
時暮、今からお前は指導室だ。緑谷、悪かったな」
思わず、流衣の腕を握る手に力が入る。
呆気にとられる緑谷を置いて、相澤は流衣を共有スペースの隅に連れていく。
自室に連れていきたいところだったが、それはさすがにと理性が邪魔をしていた。
──連れ込んだら、きっと、酷いことをしてしまう。
「…指導室じゃないんですか」
やはり、目は合わない。