第29章 教師と生徒
しかし、
「え、なんで……」
体が動かない。
流衣は笑った。
その笑みは、ただ笑っただけでその表情は見えず、感情を隠すような意図が透けて見える。
「私の個性──応用すれば、こんな事もできるんだよ?便利、だよね」
大丈夫、ソッチは使えるように調節してあるからさ──そう言って、流衣はシャツを脱ぎ始めた。
数日前にマイクの前で赤面していた乙女の姿は、どこにもない。
「ちょ、ほんとに!!!どうしちゃったのさ時暮さん!!!!話聞くって!!!」
シャツがはだけ、白い肌と布の境界が──
と、そこで部屋の扉がガチャリと開いた。
「未成年淫行罪で捕まるぞ」
「私も未成年だから、違法ではあるけど罰則の対象にはなりませんよ先生。
…………邪魔しないでください。不愉快です」
「俺も生徒たちの間の色恋沙汰に口出すなんてしたい筈ないだろ。
時暮、今からお前は指導室だ。緑谷、悪かったな」
相澤は流衣の個性を無効化し、無理矢理流衣を立たせる。
シャツの釦を器用に留めてから、ぐいっと腕を引っ張って部屋から出て行った。