• テキストサイズ

【ヒロアカ】"無個性"だけどヒーロー科

第29章 教師と生徒



緑谷と轟、どっち?だなんて。
そんなこと。

──私が、消太を好きって選択肢は、ないのかな。
──好きになるなって意味?

歩みを進める度に、心が暗い質量を増していく。

何となく自室には戻りたくなくて、そのまま外に出た。
空からの冷たい感覚に、ようやく雨が降っているのだと気付く。

個性は使っていない筈なのに、周囲の音は全く聞こえなくて、全ての感覚が消失したかのようだ。

ツー、と頬を水滴が伝っていく。

季節は夏である筈なのに、心が、体が、全てが冷たい。
合理的な同居人の優しさが、自分のためだけにあると勘違いして、思い上がって。

──振られて。

挙げ句の果てに、好きな人は誰?と、彼からトドメを刺されて。

──馬鹿みたい。

期末テストの後、ご褒美と言って外に連れて行ってくれたのが嬉しかった。
初めてのデートだ、なんて浮ついてた自分が馬鹿みたいだ。

──ヒーローにもなれず。
──消太にも振られて。
──散々だ。

そんな暗い心の中。
頭上も厚い雲で覆われており暗く、さらに近くから影が流衣の頭を覆う。

しかし、

「風邪、引くよ?」

その声は。

流衣にとっては、救いの声のようだった。
それはまるで、──ヒーローのようで。



/ 288ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp