第28章 気付く時
「いや、今ね、クラスで誰が1番かっこいいかって話してて!」
「誰だと思う?」
「絶対、轟でしょー」
きゃっきゃと楽しそうな女子たち。
──中学までも、こういうのは見てきたけど…この輪の中に入れる日が来るなんて、思ってなかった。
嬉しさと戸惑い、様々な感情を抱きつつ、流衣は律儀に応えようと思考を巡らす。
──多分、クラスメイトって意味だよね。
「……緑谷?」
外見だけ見れば、あれほど頼りないヒーロー志望などいないというのに、誰かを守らんといつも必死で、自分の事はいつも二の次だ。
そんな優しさは自分には無いし、かっこいいと素直に思える。
しかし、流衣は重大な事を忘れていた。
「うわ、すごい惚気けるね」
「やっぱあの噂ってマジだったんだー」
──あ。
そう、あれは入学したてのとある日。
緑谷と寄り道していたのをクラスメイトたちに目撃されていて、それが原因で仲を噂されていたのだ。
あの頃は流衣はかなり尖った性格をしていたため、余計にそう思わせたのだろう。
「いや、それは…」
否定しようと口を開くが、麗日は何故か慌ててそれを止めた。
「だ、大丈夫やもん!!!ウチら、応援とかめっちゃできるし!!!!!!!」
──何が大丈夫なんだろ。
意味わかんないな、と思うが、この年の女子はこんなものなのかもしれないと流衣は思い直す。