第26章 少女はヒーロー
次第に、「風景」に色が戻り始める。
エンデヴァーはその様子を見、そろそろかと思うが、流衣はそこから踏ん張った。
「まだ…ッ!」
──消太。
大切な人は、自分のいない場所で、何度も戦ってきた。今も戦っている。
力があるはずの自分が見ているなんて、もうしたくない。
──私だって、守りたい。守らせてよ。
色を取り戻し始めた白黒の風景は、範囲は狭まったものの、白黒の状態をキープしていた。
相変わらず、白黒の部分は微動だにしない。
まるで、その部分だけ、──時が止まったかのように。
「…時暮」
エンデヴァーが、思わず彼女の名を呼ぶ。
それは、ヒーロー史上最も恐れられた人物であり──最も、仲間からの承認を渇望している、そんな人物の名前だった。
そしてそれと同時に、偶然か──会見を終えたばかりの相澤は、友人からのメールを見て、溜息を吐いた。
それと共に、「クロノス…」と呟く。
その名前は──10年前に生まれたヒーローの名前であり──彼の、愛する人の名前でもあった。