第26章 少女はヒーロー
──こ、こんなに脳無いたの…?
──さすがに、こんなに個性使うのは、…
拙い。
初めてだった。
個性を本気で使うのも、使いながら激しく動きまわるのも。
個性を使えば、どんなにのんびりしたところでスピードには負けないし、力技でも負けることは絶対に無かった。
しかし、個性使用にも限界はある。
自分の個性は、使い方を一歩間違えば大量の死人を出すことになってしまうし、つまりここにいる人員の生死は、流衣にかかっていると言って過言でないのだ。
しかし、脳無が増えるごとに、流衣の集中力は分散されていく。
だから、早く済まさなければ──そんな焦りが、流衣を駆り立てていた。
「っ、は、……」
──マズいマズいマズいマズい…
脳が悲鳴を上げている。
肺が酸素を渇望している。
彼女を、今までなぜ個性を伸ばそうとしなかったかと詰問するのは酷だろう。
彼女が個性の使い方を誤れば、周囲の生物は死ぬのだ。
それに、その規模は計り知れない。
無闇に、流衣が個性を扱うわけにはいかなかったのである──。