第24章 林間合宿──私情
「爆豪」
少し緊張した面持ちの流衣が、包丁を手に持つ爆豪に声をかけた。
普段の仲の悪さから、クラスメイトたちはヒヤリとする。
しかし──
「あぁ?何だよ」
「あの、…包丁っていうか、……料理、教えて欲しいんだけど」
駄目かな?
なんて、流衣は小首を傾げた。
身長のせいか自然と上目遣いになる流衣と、一瞬固まる爆豪。
それを遠目に見守る1-A男子。
──うっ、羨ましいぜ爆豪…!!
「おっ俺なら手取り足取り腰取りぃぃぃ」
「爆豪、そのポジ変われ…!!」
峰田と上鳴は涙を流しながら悔しそうに呟くが、当然彼らに爆豪ほどの料理の腕前はない。
「ったく…無個性どころかお前、料理もできねぇのかよ」
雑魚だな。
そう言いつつも、流衣を後ろから抱き締めるような体制をとり、そのまま手を重ねて包丁を手に取る爆豪。
頼られるのが珍しいからか、満更でもないらしい。
普段の殺伐とした空気とは一転、和やかな雰囲気で料理を進めていく2人。
この日から、2人は親しくなっていく。
相澤はそんな2人を見て、少なくともいい気分はしないな、いや友達を作れと言ったのは自分だから──と、暫く葛藤することになる。