第24章 林間合宿──私情
翌日。
──そろそろか。
時計はあと5分で5時を指す。
相澤は眉間の凝りを指で解しながら、スマホを手に取った。
そして昨日と同じく、とある番号を呼び出──
そうとしたが、掛ける直前に電話が掛かってきた。
その番号を見て、驚きつつも手に取る。
『おはよ』
「…おはよう。早いな」
声の主は、今正に電話を掛けようとしていた相手、流衣だった。
起こすためにと思っていた為、少し拍子抜けというか。
寝惚ける彼女の声を聞けなくて残念だとか。
思ったり、思わなかったり。
『えへへ、びっくりした?
っていうか朝早いね?
今日は私が起こしてあげようって思って頑張ったのに。ザンネン』
「先生は朝早いんだよ。
…忙しいからもう切るぞ」
『はいはーい。
じゃあね!また後で』
切れたのを確認した途端、相澤溜息を吐いた。
──可愛くなりやがって……
忙しいと言うのは嘘だ。
気持ちの高まりを勘づかれてはならないから切らなければと思った、それだけの事である。
俺を起こすために電話した、と流衣は言った。
他の女なら何も思わないかもしれないが、流衣は朝にめっぽう弱いのだ。
そんな彼女が自分のためにと思うと堪らない気持ちになるし、抱きしめたくなってしまう。
この数分後、部屋を出て鉢合わせたブラドキングに「機嫌良さそうだな」と言われるのは、ほんの少しだけ後の話。