第23章 林間合宿──少女の微笑み
流衣を起こすのは、しなくても良いものなのは分かっている。
それが同僚たちから過保護だと揶揄される原因だというのも、理解している。
だが、
──お前の声を、聞きかっただけだ。
そう思うのは、教師失格だろうか。
普段とは違い、合宿中は流衣とあまり親しくは話せない。
教師──ブラドキングは知っているが、それでも他の生徒たちに変な勘違いをされるのを避けなければならないからだ。
だからこそ、朝の寝惚けた時でもいいから──と話したいと思ってしまうのだ。
寝惚けた姿を他の男──いや、ただの生徒だが──に見せたくないと思ってしまうのも、悪い事だろうか?
自分が流衣に抱く感情は、完全に親としてのそれを超えてしまっている。
それを理解していても、尚。
彼女を自分の元にいて欲しいと──他に行ってほしくないのだと──子供じみた独占欲が溢れてしまうのだ。
「…合理性からは程遠いな」
相澤は静かに自嘲した。