第23章 林間合宿──少女の微笑み
リリリリリリリ
翌朝、流衣の1日は電話の受信音で始まった。
「あい…20時間後におこして…」
『寝惚けてるんじゃねえよ。あと30分で集合だ、起きろ』
「うぇ…まだ5:00………」
『家じゃないんだ、起こしに行けないのくらい分かってくれ』
聞きなれているくたびれた声に、流衣はうふふと笑った。
ようやく目が覚めたらしい。
「こういうのは拙いんじゃないの?」
教師が生徒を起こしに、モーニングコール。
そもそも前提として、教師と生徒が同じ屋根の下で生活している方が拙いのだが──それを、2人は全く気にしていない。
そもそも、前夜に相澤が担任としてではなく、個人として流衣の部屋を訪れていたのだが──それを、流衣は覚えていないようだった。
『お前が寝惚けてるのを子供たちに見──…いや、何でもない』
相澤が何を言おうとしていたのか、流衣には聞こえなかった。
「へ?」
聞き返すが、
『…早く準備して外出ろよ』
そう誤魔化されて、電源は切られた。
電話の向こうで相澤が口元を抑えていたのを、流衣は知らない。