第23章 林間合宿──少女の微笑み
「…私、ここにいても大丈夫なの?」
クラスに女子が少ないせいか、A組は女子同士の仲が良い。
その中に自分が入っていいのかと、そんな事を不安に思ってしまう。
しかし、ええ!と八百万は笑った。
「以前から、時暮さんとはお話ししたいと思っておりましたの」
「無個性なのに凄い成績やし、なんか可愛いし!」
「でもさー、なんか近寄り難いイメージとかがあって話しかけらんなかったんだよね」
「少しでも、流衣ちゃんの事知れたらと思って!」
それぞれからの優しくそして純粋な言葉に、
少しだけ流衣の胸が痛む。
──ごめんね、嘘なんだ、それ。
自分が可愛いかどうかは人の好みそれぞれだし何とも言えないが、少なくとも無個性だというのは真っ赤な嘘である。
自分が「無個性なのに」優秀なのが凄く、そして気になるだけであって、彼女たちは「時暮流衣」そのものに興味をもっている訳ではないのだろう。
仕方の無い事とは言え、やはり騙すのは心苦しかった。
ありがと、と上手く笑えてるか分からないような微妙な笑みを浮かべて。
短い時間のあいだ、女子だけの華々しい会話に花を咲かせた。