第23章 林間合宿──少女の微笑み
生徒たちを置き去り(?)にし、バスで宿舎に向かうこと約2.5時間。
駐車場に着いたら、あとは何をして生徒を待つかと思っていた、そんな時。
「…え?」
ピクシーボブが、驚いた声を出した。
相澤もそちらを見て、それからああと納得をする。
移動手段が車だった自分たちより早く、施設に到着していた生徒がいたのだ。
「ウチの生徒です」
──使ったか。
本人には疲れどころか、制服の汚れすらも見当たらず、余裕の笑みを浮かべて玄関口に座っていた。
車のエンジン音に気付いたのか、流衣は立ち上がってぶんぶん手を振った。
──普段は、子供らしいんだけどな…
嬉しそうに笑っている。
学校でこそ無愛想だと思われがちだが、流衣はもともと感情豊かな方だ。
心許す者の前では、あんなにも緩んだ表情になる。
「…速すぎない?」
「いえ、あいつならあんなもんでしょう」
彼女がのんびりしていたのか、それとも急いで来たのかを測る術はない。
しかし、彼女なら、しようと思えば車より早く到着など朝飯前である。
しかし、いくら今回世話になるからと言っても彼女の事情を話すつもりは無い。
相澤は、2人との会話を有耶無耶にしたまま、流衣の元に行った。