第22章 ご褒美の心労
──たまには温泉もいいなぁ。
相澤の心理状態などいざ知らず、流衣は呑気に湯に浸かりながら鼻歌をうたっていた。
──でも、今度は消太の提案してくれた場所にも行こう。楽しそうだ。
相澤が選んでくれたのは、年頃の──流衣くらいの女の子なら誰もが喜ぶような、テーマパークだったり、超大型ショッピングモールだったり、スポッチャだったりと、やたらと動くものが多かった。
(流衣の買い物はハードなので、肉体的疲労はとてつもないのである。)
どこも自分のためにと調べてくれたのだと思うと嬉しく、また、魅力的だとも思ったが、今回ばかりはそんなハードな場所に行く訳にはいかなかった。
USJ事件、体育祭と──今年に入ってから、相澤は忙殺されている。
生徒を除籍しないのも珍しいし、家に仕事を持ち帰る事も増えた気がする。
だからせめて、と流衣は相澤を連れ出したのだ。
──温泉でも来れば、体は癒されるもんね。
まさか温泉のせいで精神的に疲れがきているなどとは露知らず、流衣はほくほくとしている。
温泉ついでに、親孝行をした気分にでも浸っているのかもしれない。
それは完全に空回り、寧ろ相澤にとってはありがた迷惑でさえあったのだが。