第22章 ご褒美の心労
しかし現在──
この外出を楽しみにしていた、数日前からの自分を殴りたいと、相澤は安易に約束を契ったことを後悔していた。
なぜ、なぜ──流衣の行きたいという「外出」が、温泉旅行という老人臭いものなのか。
いや、老人臭くはないと言うならば──艶っぽい、か。
恋人でもない異性を温泉旅行に誘う、年頃のはずの流衣の心がまるで分からない。
車に乗り込み、少しサーチした「楽しそうなスポット」を言い、どこが良いかと訊くと──思いもよらぬ回答。
即ち、
──「温泉旅行がいい!」。
流衣のテストへのご褒美──クラスで座学は1位を叩き出したのだ──ということで、何も文句は言わずに連れてきたが──早々に、後悔する場面と出くわした。
まず、宿の空き部屋が1つであったこと。
寝具が1つで、運悪く今日ばかりはマイ寝袋を持ってきていなかったこと。
そして、置いてある部屋着がバスローブであったこと。
──本当に、カップルみたいだ…
さすがにここまで来ると、夢心地というわけにはいかなくなった。
自分の理性との戦いになるからだ。
──何で温泉なんだ…
今後悔しても遅いのに、相澤は過去の自分を恨まずにはいられなかった。