第22章 ご褒美の心労
温泉から出て車で流衣が戻るのを待つこと、約1時間。
「早かったねえ。もしかして待った?」
ごめんごめん、と流衣は謝りながら助手席に座ってきた。
──だめだ…
早くも理性が危うい。
風呂上がり、火照った頬にふわりと香る、石鹸の匂い。
服装も普段より少しラフで、高校生とは思えない色香が漂っている。
車という、密閉された空間。
時刻は夕方、辺りはそろそろ暗くなり始める頃──つまり、今はまだ明るい。
──誘ってるようにしか見えない、これは重症だ…
今日は夜食べたら早く寝よう、と。
相澤は固く決意する。
しかし、それを流衣が許すはずも──あった。
「…いいのか?」
てっきり、せっかくなんだからもっと話そうよと強請られると思っていたのだが。
あっさりと頷く流衣には、些か拍子抜けである。
「うん。疲れたんでしょ?早く寝なよ」
──ある意味では確かに…疲れたな。
変なこともあるものだ、と相澤は首を傾げながら寝床についた。
その安らかそうな顔を見て、流衣は幸せそうな表情を浮かべていた。