第22章 ご褒美の心労
テスト、いい点取れたらどこか行こうね。
流衣はにこにこと笑ってそう言い、自分もそれに頷いた。
自分から誘ったような記憶もある。
それは覆りようのない過去であり、そして、約束の日は迫っていた。
──デートって考えて良いのか?
二人きりの外出。
教師と生徒の関係になってからは控えているが、昔はよくどこかへ連れていってやっていた。
だが、昔と今では、自分の感情も、彼女も、何もかもが違う。
──まともな服なんかあったかな。
さすがに彼女と並んで歩くのに、小汚いと周囲に評される服装で行くのは嫌だ。
似合いのカップル──とは見えなくとも、違和感がない仲には見せたい。
少しくらいは着飾りたい、と思ってしまうが自分はいつからオトメだったのか。
流衣は私服姿になると、すれ違う誰もが振り向く美人へと変貌を遂げる。
高校生という記号が彼女を自然と幼く見せているのだろう。私服にもなると、文句なしの絶世の美女である。
せめて外出する時だけでも。
釣り合いたいと思ってしまう。
私服のセンスや流行りへのアンテナなど、マイクなら流衣と合うのかもしれない。
だが、誘われたのは自分だ。
例え彼女が、自分をただの後見人や同居人としか思っていなかったとしても。
少しの間、浸らせて欲しいと思うのだ。