第18章 「オフのヒーロー」
「相変わらず優秀ですね」
1番にセメントスの元へと辿り着いた流衣に、彼は苦笑した。
「………あのクラス、居心地が悪いので。個性使って、早く来ました」
建物内からは、急に消えた流衣に対し、驚く声や放っておこうといった声が上がっていて、やはり仲がいい。
「彼らは仲がいいですからね。君も友達を作ってみては?」
「受け入れてもらえる筈がありません。私のような、存在など」
流衣の言葉に、セメントスは溜息を吐きたくなった。
──この子の世界は、やはり、狭い。
世間はこういうものなのだと決めつけている節がある。
親代わりである相澤を慕うのは構わない。
いい事だとさえ思う。
しかし、視野を狭めてしまうのは頂けない。
こんなにも優秀なのに、狭い世界で生きるのは勿体無い。
外の世界を、誰よりも欲しているというのに。
拒絶する気持ちも判る。
セメントスも、彼女の過去に何があったのかを知る人物の1人であったから。
しかし、例に漏れず、自分も流衣から見れば「信頼できない」対象なのだろう。
教師だから、交流があるから会話しているだけで。