第18章 「オフのヒーロー」
それを察したのか、それとも他の理由か──流衣は、眉ひとつ動かさずに言い返した。
「"オフのヒーロー"が一般市民に紛れていてもおかしくはないよね。…私は1人でいいから」
実際、ヒーローが来ても私は放っておかれるだろうし。
続けたその自嘲の意味を理解できた者は、その場ではセメントスだけであった。
そんなに寂しい事を言わないでと、緑谷は声を描けることができなかった。
なぜなら、彼女の表情はあまりにも儚げで。
触れただけでも、すぐに壊れてしまいそうな。
なぜそんなにも悲しそうなのか。
その表情の意味を、緑谷はまだ知らない。
クラスメイトも、誰も。
彼女の思うことを、何も知らないのだ。
ただ、轟だけは、何か心当たりがあるのか、少しだけ眉を顰めていたのだが。
しかしそれでも、やはり何も言わず。
彼女は1人で、その場から逃げ出した。
これ以上、このクラスには居たくないとでも言うかのように。
歩いてはいたけれど。
誰も、止めることはできなかった。