第18章 「オフのヒーロー」
──この拗らせ具合、どうにかなると良いけど…
そうは思うも、こればかりは周囲でなく本人の努力も必要である。
もっと周囲と関わろうとしてくれなければ、これは改善されない。
だが、流衣はクラスメイトを拒絶している。
普通科のように変な僻みも少ないヒーロー科、特にA組はいわゆる「いい人」が多い。
その中でも比較的コミュニケーション能力が高く、社交的と思われる緑谷や蛙吹に対してすらもあの態度なのだから、他のクラスメイトたちへの態度は想像に難くない。
彼女の単独行動に対しての言葉からも、クラスメイトたちが彼女と親しくないことは明白である。
──でもかと言って、私たち教師が口を出すのも違う。
ちらりと隣を盗み見る。
やはり流衣は、哀しい表情。
寂しがりなのに頑固で意地っ張り。
自分の感情を隠す癖がある。
自分たちヒーローは、彼女を救うことができるだろうか。
もしくは、彼女に「ヒーロー」が現れる日は来るのだろうか。
セメントスは、知らなかった。
彼女には既に、「相澤消太」というヒーローがいるということを。
彼と一緒にいるのは、彼が流衣を孤独から救い出した張本人だからなのだと。
しかしそれでも、彼女が現在、孤独による寂しさを感じていることには変わりなく──そういった意味での「ヒーロー」がいつ現れるのか。
それはまだ、誰にもわからないことだった。