第18章 「オフのヒーロー」
職場体験も終わり、テストが近くなっていく。
しかし、それとは関係なしに授業は進んでゆく。
この日は、セメントスの実技訓練だった。
訓練場βに着いた途端、轟たちは周囲をコンクリートで固められた。
「なッ!?」
「何だあ!?」
皆が驚く中、流衣だけは「………」と静かで表情ひとつ変えない。
「今日は君たち生徒が被害者…一般市民の設定です。閉じ込められたその建物から、団結して敵と接触しないように脱出してください。ヒーロー役は緑谷くんと轟くんの2人でお願いします。君たちで、皆を外に誘導してください」
外から、セメントスの声が聞こえる。
爆豪はヒーローの配役に不満げであったが、ムスッとしたまま何も言わない。
「えっと、じゃあみんなこっちに!」
緑谷が誘導しようとするが、やはり和を乱す者が、1人。
「……………」
クラスメイトたちには目もくれず、流衣は緑谷の示した道とは逆方向に進んでいった。
「あっちょっと時暮さん!?」
緑谷は慌てて声を掛けるが、流衣は振り返りもしない。
「こっちだと思う」
そう呟き、てくてくとわが道を進む流衣。
クラスメイトたちからの不満は爆発だ。
「これは授業だぞ!?」
「勝手な行動はやめたまえ!」
「私たちは"一般市民"なのよ、ヒーローに従いましょう」
蛙吹だけはやんわりと言うが、その他からは不満たらたらだ。