第16章 職場体験
職場体験に興味がない訳ではない。
だが、自分のような存在が受け入れられるはずもなかったし、相澤の言う通り、しなければならない事があった。
そちらを優先しなければ、と思ったのも事実だった。
そして、それを行えるように学校側と話を何日か重ねる。
どうやら今はまだ無理のようだ、と言外に示され、諦めて帰路についていた時だった。
いつものように寄り道をし、今日はどこに行こうかと考えていた、丁度その時。
ブブ、とバイブが小さく鳴る。
表示されたのは、相澤の名前。
嫌な予感がして、考えるより先に通話ボタンを押した。
「消太っ!?」
『そんな焦るな、俺の有事ってわけじゃない。……ヒーロー殺しに、ウチの生徒が遭遇したそうだ』
意外にも落ち着いた声に、流衣は安心する。
あくまで心配なのは、怪我をしたかもしれないという生徒よりも相澤の方だ。