第16章 職場体験
翌日も、流衣は学校を通しての国との対話に追われていた。
クラスメイトたちが職場体験をする中、自分だけは別の事をする。
クラスメイトたち──緑谷や轟は、今頃何をしているだろうか。
緑谷の体験先は、確かグラントリノだった筈。
その老人とは流衣は直接関わりはなかったものの、オールマイトを通し、互いに存在だけは認知していた。
──怖いんだっけ。オールマイトさんが怖がってた記憶しかないけど。
大丈夫だろうか、と。
少しだけ思案する。
クラスで数少ない、自分と話したことのある人物だ。
何かと気にかけてくれるし、お人好しなのだろう。
見た目は地味で、頼りなく、個性だってまだ使いこなせていない筈なのに、彼の周りにはいつも、沢山の人がいた。
──緑谷に何かあったら、多分…みんな、悲しむから。
──私に何かあったら…誰か、悲しんでくれる人はいるんだろうか。
ふと、いつも怠そうにしている同居人の顔が脳裏を過ぎった。
──………。
職場体験には行くなと言ったその男。
何も文句を言わずに頷いたが、──これで良かったのだろうか。