第12章 友達、そして覚悟
相澤は、部屋の扉の目の前で足音が止まったのを聞いていた。
部屋の明かりは消してあるが、寝ているわけではない。
今日は流衣を見送り、昼飯を済ませてからずっと、自室に篭っていた。
──避けてる訳じゃないけどな。
でも、今日は流衣の顔を見たくなかった。
男と出かけてくるだなんて嬉しそうに笑う流衣を、見送るだけでも辛かったというのに、迎えることなんて快くできるはずもなかった。
自分のものにしたい気持ちと、生徒だから家族だからと距離を置こうとする理性。
その葛藤は、誰に話せる訳でもなく、──自らの心の内にしまっておく他ないのだ。
マイクが人目憚らずに言う「流衣は可愛い」とは違うのだ。どうしても、感情が篭ってしまうから。だから、口には決して、出せない。