第12章 友達、そして覚悟
──「あの…思うんだけどさ、学校でも、今日みたいに笑えばいいんじゃないかな」
遠慮がちな緑谷の言葉を、眉尻を下げて流衣は拒否を示した。
「…後が、怖いよ」
「それって、どういう…」
「ごめん、これ以上は言えない」
──緑谷の気遣いが、私には痛い。
彼の優しさは、恐らく生来の基質によるもので、見せかけのものではないのだろう。
クラスメイトたちも、何だかんだ言いつつも自分を受け入れてくれるだろうとは思う。
そんなクラスなのだ。
──本当はさ、やっぱり、みんなと騒いだり、たくさん……してみたい、けど。
──後で拒否されるかもと思うと、一歩を踏み出すことができない。
臆病すぎる性格が、友達作りの邪魔になっている事くらいは重々承知だ。
分かってはいるのだ。
でもやはり、──怖い。
緑谷と今日少し話して、距離が縮んだ気はしていた。
それが嬉しくもあって、それと同時に、怖くなった。
あの優しい同級生から拒否される時が来たら。
怖い。
その恐怖を拭おうと、癒してもらおうと、思っていたのに、相澤はもう寝てしまったらしい。
──潰されそうだ。
とてつもない不安と恐怖に必死に耐えながら、流衣は唇をきゅっと結んだ。
──…怖いよ。