第12章 友達、そして覚悟
帰宅した流衣は、張り詰めていた糸を解いた。
どっと疲れが押し寄せる。
楽しかったはずなのに、すごく疲れていた。
まるで今日1日ずっと、──重い石を、背負っていたかのような、そんな疲れ。
──隠し事、するってこんなにしんどかったっけ。
中学までは、寄ってくるクラスメイトたちに隠し事や嘘を重ねても、心は全く痛まなかった。
どうせしばらくしたらまたいなくなるんだろうと、どこか冷めた目で見ていられたから。
それなのになぜだろう。
緑谷も轟も、他の関わりのないクラスメイトたちにも、無個性なのだと言い張るのが心苦しい。
自分の過去を誤魔化し続け、冷たい人間を演じ続け。
それがどうしてか、こんなにも、胸が痛い。
彼らが有望株だとか、そんな話ではない気がする。
──この前。
付き合っているのかと、訊かれた時の事を思い出す。
あの時は確かに、自分は──彼らの、輪の中に──友達が羨ましいと、そう、思ったのだ。
──私は、緑谷の、友達に…なれてるのかな。
──他のクラスメイトは?
──私に、ヒーロー以外の友達なんて…できるのだろうか。
ふるふる、と首を横に振る。
──できる筈がない。