第12章 友達、そして覚悟
それは緑谷がクラス一のヒーローオタクだからで、決して「緑谷出久」に教えてほしいと思ったからではないのだ。
「ぼ、僕は習い事とか何もしてないから…僕でよければ、いつでも呼んでよ」
緑谷が予約した店に着くまでのあいだ、2人はクラスの話をした。
普段クラスメイトから距離を置いているとはいえ、やはり同級生に無関心である訳ではないらしい。
ならなぜ距離を置くのか分からないけれど、何か理由があるのだろう。
時折寂しそうに笑う表情が、それを示していた。
学校とは随分態度が違うな、と緑谷は思う。
クラスでは、ふてぶてしく、無気力で、少し冷たい感じのする彼女。
しかし今は、どこにでもいる普通の、明るくて可愛らしい少女だった。
ミッドナイトの初授業のことも併せて考えると、こちらが素なのかもしれない。
──時暮さんの事だから、理由がある筈だけど。でも、素を見せてもらえないのは、少し、悲しいな。
チクリと胸が痛んだ。