第12章 友達、そして覚悟
そして日曜当日、緑谷はいつになく緊張していた。
早めに来て待っているのだが、こちらに歩いてくる女性全てが流衣に見え、毎度ドキドキしてしまうからだ。
「緑谷ごめん、待った?私、遅かったかな」
待つこと数分、時間ぴったりに流衣はやって来た。
待たせちゃったね、と流衣は片手を上げて謝る。
緑谷の目に映ったのは、初めて見る、私服姿の流衣。
いつも下ろしている髪はポニーテールにされていて、耳には華奢なイヤリングが輝やいている。
肌の透ける素材が部分的に使われた薄手の白いニットに、デニムのスキニーを合わせている。
大人っぽい私服は彼女のスタイルを際立たせて見せ、緑谷には直視できない。
「いっいやっ大丈夫!!!こっちこそ、僕なんかで良かったの…?」
「うん、緑谷じゃないと嫌なの」
ぶわ、と緑谷の頬は朱に染まる。
──だめだ、この言葉に、深い意味はないんだ………っ
なぜなら、
「じゃ、行こっか!」
「個室が良いって事だから…カラオケとかでいいかな?」
「ありがと!…でも良かったよ、緑谷が直接教えてくれるなんて」
休日に2人で会おうという話になったのは、流衣が緑谷にヒーローについて教えてほしい、と願い出たからである。