休載P4A 【 My happy definition】
第15章 可愛い後輩(アニメの11話)
7月に入ってすぐのことだった。りせちゃんがだんだん体調がよくなってきて、お見舞いがてらに丸久に豆腐を買いに来た。
「堂島先輩、クッキーありがと。甘いの食べたかったからうれしい」
「りせちゃんのおばさんって結構過保護なんだね」
テレビの中の霧が原因なんだろうが、りせちゃんが体調悪いのは偏った栄養が原因だと考えたらしいおばさん。そのためおやつ厳禁で毎日病院食のような献立だとか。
「うわっおいしー」
「よかったー、これね妹の菜々子と作ったの。
ほらうさぎさん」
「かわいいーっ!先輩ホント上手っ!
ねぇ、今度教えてくれない?悠先輩に作ってあげたくって」
「私でよければいつでもいいよ」
「胃袋掴めばいいもんね」
りせちゃんの作ったクッキーなんてみんな羨ましがりそうな品物。悠も幸せ者だな、と少し難しめのクッキーを作ってみようかと考えた。あの四角模様のクッキーとか悠っぽい。
「それじゃお大事にね、まだ安静なんだもんね」
「一応ね。もうこんなに元気なのに。
先輩、ホントありがとうございましたっ!」
「うん、今度は学校で会おうね」
ムキムキと腕を90度に曲げて力強いポーズを決めるが、なんだか少し嫌な記憶が出てきそうなのでりせちゃんに手を振ると彼女も振替してくれた。りせちゃんスマイルのおかげで記憶は塗り替えしてくれた。
ほっとしながら商店街を歩くと、いまだに感じる同情の視線。ここじゃ私も時の人だった。
忘れられないよね。
でも今はみんなが、仲間がいるから、そして強い私がいるからすぐに気にならなくなった。堂々としていれば、それぞれで判断してくれるだろう。吹っ切れた、立ち直った、どんなことでもいい。昔のビクビクした私じゃないんだ。
「あれ、巽くん?」
「あっ…せせ先輩っ!?」
目が合ったと思えば、たちまち巽くんの顔が赤くなっていった。それなりに熱くなってきているし、もしかして熱中症なのだろうか。
「大丈夫!?巽くん、少し日陰で休もう?」
「ちょ、ちょっと、触るなって」
「ええ、ごめん引っ張ったから立ち眩みしちゃった?ゆっくりでいいから、ほらこっち」
「いや、そうじゃなくって…」
シャッターの降りているお店の屋根の陰へと少し入らせてもらうことにした。ちょうど近くに自販機もあったので水も買っておこう。