休載P4A 【 My happy definition】
第3章 暖かな香りが花開く頃 (アニメの1話)
「一応お前の歓迎会だからな」
「お寿司とハンバーグ!食べてね」
「乾杯」
これからは1年だけだけれど、この4人で家族になる。鳴上悠は思ったよりも大人しい人だった。大人しいのは、もしかするとこちらへ向かう間に乗り物酔いしてしまい、それで疲れているのかもしれないけれど。
菜々子と口を揃えていただきまーすと、お寿司に箸をむかわせたところで、ピピピっと着信音がする。
「ったく、こんな時に・・」
電話に答えつつ席を後に、急な仕事が入ってしまい出ていってしまった。帰りは何時になるかわからないって。
「お父さん、傘持っていったかな」
「お父さんだから傘のことなんて忘れてるよ」
がっかりした気持ちが大きく、私と菜々子は静かに箸を進めた。
「刑事、だっけお父さんの仕事」
「うん、いつもこうだよ。電話鳴るといっちゃうんだ」
「忙しいもんね」
ハンバーグを頬張った口をもぐもぐと動かしつつ、菜々子はテレビのスイッチを押す。
ちょうどジュネスのCMが始まり、菜々子も一緒に歌っている。少し音痴なところがとてもかわいい。携帯で動画を撮ろうとすると菜々子に怒られる。
「お姉ちゃんは、ジュネスないの?」
「バイト?うんと、明日と明後日はお仕事入ってるかな」
「お姉ちゃんはいいなー菜々子もジュネス行きたい!」
「お仕事だから、忙しいんだよー」
納得しないのか、口を膨らませこっちを見てくる。ぷにっと頰をつまんでみると、そのまま菜々子が笑い、釣られて笑ってしまった。
「こんな感じなんだ、我が家。
よろしくね、鳴上くん」
「あ、うん。よろしくおねがいします」
改めて頭を下げていると、菜々子に変なのーっと笑われてしまった。菜々子の笑顔はいつも周りを暖かく包んでくれる。