休載P4A 【 My happy definition】
第11章 気に食わないこと(6月入る前の話)
ルナちゃんは震えた声で、あいつが家の中にいることを教えてくれた。なんだか、自分の縄張りに入られた気分で最悪だ。
奴がいるであろう家から視線をずらし、彼女を見ると目が合った。少し驚いたような顔をされたので、自分が怖い顔しているのを悟り、いつもの僕の顔に変えた。
「大丈夫」
何気に初めて彼女の頭を触った気がする。ふんわりと甘いシャンプーの香りがした。菜々子ちゃんと同じ匂い。
「ルナちゃん、とりあえず中に入ろうね。僕も一緒にいるから。だけど、少し夜桜と話したいから、自分の部屋で待っててくれる?」
取り乱していた様子は落ち着いてきたのか、しっかりと僕の顔を見て頷てくれた。
ホントに気に食わないやつだ。さっさとテレビの中に入れてしまおう。僕が罰してやる。
家の中の様子が分からないため、僕が先頭に中へはいることにした。そしてタイミング見て合図をしてルナちゃんには2階へと上がってもらう。そして、いかにして夜桜をテレビまでひきつけれるかだ。
家の中に上がり少し進んでいけば、居間から奴の声が聞こえてきた。そしてルナの肩をポンと触ると、再び目が合った。緊張しているのか、ぎこちない。階段で転ばないといいんだが、奴の姿が見えるまで刺激したくない。
彼女の姿が見えなくなり、居間へと踏み出した。つくづく自分らしくないと思うが。やっぱりムカつく。
「ルナかっ!
誰だお前」
「いきなりうるさいなぁ、そんなの気にしなくていいから」
「出ていけっ!」
「それはお前のほうだよ」
ちょうど夜桜はテレビの方へと下がっていったので、そのまま追い詰めるように近づいた。
「く、くるなっ!殴るぞ!!」
「あーはいはい、口だけ達者なんだから」
思ってよりも奴の身長は僕より低く、簡単に首を抑えることができた。そしてそのままテレビに押し付けた。
「ひぃいやめろっ!やめてくれっ!俺はただっ」
「なに、なんか言うことあるの?僕、そんなに気が長いほうじゃないんだけど」
「違うんだっ、本当にただっルナの顔を見たかった、だけで」
「よくルナちゃんのお母さん殺しておいてそんなこと言えるねっ!」
「なんだ、お前、知り合いなのか!?なんでこんなことをっ」